オーレン・アンバーチ、Sunn O)))について語る
(2009年)

Sunn O))) Exclusive Interview Transcripts: Oren Ambarchi by Joseph Stannard
WIRE
April 2009
http://www.thewire.co.uk/in-writing/interviews/sunno_exclusive-interview-transcripts_oren-ambarchi

ジョセフ・スタンナード: Sunn O)))でのあなたの役割、特に最新アルバム(『Monoliths & Dimensions』(2009年))での役割はどのようなものだとお考えですか?

オーレン・アンバーチ: もう何年も前、私がスティーヴン(・オマリー)とグレッグ(・アンダーソン)に会う以前の話ですが、スティーヴンはニューヨークで行われた2004年のCMJフェスティバルでDJをしていました。彼はそこで私のソロアルバム『Grapes From The Estate』(2004年)に収録されている『Corkscrew』を流したそうで、その曲の低周波が会場の火災報知器とスプリンクラーを作動させてしまい、観客は避難させられ、消防局が駆けつける騒ぎになってしまいました。すぐに次の日、「僕らは一緒に仕事をする必要がある」と、彼はメールしてきました。

二人とも私のソロのファンで、特に、私が好んで使う濁りないトーンの重低音のファンだったので、最初はギターの低音――彼らは「ベース爆弾」と呼んでいましたが――を彼らのライブ演奏に足し、続いて彼らのアルバム『Black One』(2005年)にも加えました。ところが一緒に作業をすればするほど、私は当初のパートを超えてさまざまな要素を持ち込むことができるようになりました。二人ともコラボレーションに関してとんでもなくオープンで、上手くいくかもしれないと思えば何だって喜んで試すんです。

『Black One』の制作が進むにつれて、私はより自由にアプローチを考えられるようになっていきました。ギター以外にも、声のテクスチュア、パーカッション、金管、木管、電子音や環境音などを加えていきました。さらに、何回か一緒にライブを行った後は、グレッグとスティーヴンのギターと同じフレーズを演奏して、リフをダブルにしはじめました。そうすることで全体のギターサウンドをいっそう重く、厚くしたんです。『Black One』への貢献はメールを介したコラボレーションでしたので、ここオーストラリアから行ったものです。一方で新しいレコードでは、初めて一同に会しスタジオで録音しました。多くの曲は、三人でその場で演奏したギターリフをもとに、そこに多重録音することで形作っていきました。ですので、Sunn O)))では、特にスタジオ録音では、私はリフに厚みを加えるという役目と、曲を良くするためにそこらにあるものを手当たり次第試すワイルドカードとしての役目を、行ったり来たりしているんだと思っています。

スタンナード: Sunn O)))の音楽性のどこに惹かれていますか?

アンバーチ: 多くの人がSunn O)))と私のソロはかけ離れていると思っているようですが、私からすれば類似点が多いですね。私は没入できるサウンドや楽曲が大好きなので、とてもシンプルに演奏を始め、あとは延々と催眠的に続けていく傾向があります。先ほど言ったように体で感じられる低周波音に魅せられているので、タッチ(イギリスのレコードレーベル)からリリースした最初のソロアルバムから、ずっと低周波音を使っています。それが1999年頃のことですが、以来この音域は私のおもな関心事のひとつとなっています。

Sunn O))) の音楽はとんでもなく重低音が効いていて、トランス状態へと誘われるものなので、一緒に演奏することは楽しくてしかたないんです。曲は長く、ゆっくり時間をかけて展開し、一方で背後では常に緊張感が保たれています。いま挙げたことは、どれも私が無類に好きな要素なんです!
ソロでは、ひとつのアイデアの持つ可能性をすべてのディテールに於けるまで検討することが好きで、その作業に夢中にさせられるのですが、Sunn O)))には同質なものを感じます。加えてスピリチュアルで儀式的な要素には、私の(ユダヤ教の)出自から共感できます。シンプルに始まりある種の探求へと向かう、インドのラガのような、長い、延々と続く曲や即興演奏を、いつも愛してきました。

スタンナード:Sunn O)))とのコラボレーションから、最終的に何を得たと思います?

アンバーチ: 私がソロの文脈でもある意味やるだろうことを、スティーヴンとグレッグとできるのは素晴らしいことです。ただ、Sunn O)))ではソロとは全く違った文脈の中で、全く違う観客に向けて、より大がかりな機材の編成でそれができます。二人と一緒にやるようになってから、私のソロは、特にライブでは、より遅く、より低く、より体感できる音楽へと変わりました。音圧や残響、フィードバックについて、それから音波を浴びるように体感することがどんなに楽しいかということについて、Sunn O)))との仕事から多くを学びました。

この点では、いままで一緒に仕事をしたアーティストで同じような衝撃を私に与えたのはフィル・ニブロック(アメリカの作曲家、映像作家)だけでしょう。フィルのギター作品を演奏すると、いつもある種の恍惚を味わいます。彼の曲が続く間は聴衆として音に反応し、どうしたって「ハイ」になりますが、同じ瞬間に私は演奏家としてその「ハイ」をコントロールして思うままに形作ることができます。そうして演奏が終わるたびに、もう一度それを体験したくなるんです。この種のトランス状態を引き起こす身体的な体験を、フィルは必ず与えてくれます。Sunn O)))もそれに近い瞑想体験を与えてくれます。
第一に一緒に仕事をしていい友だちになった人たちと、何か特別なものを作ることは喜びですよ。私たちは出身国も違えば音楽的なバックグラウンドも違うにもかかわらず、精神的には似ているんです。例えば、5年前であればメイヘム(ノルウェーのブラックメタル・バンド)のボーカリストと仕事をするなんて想像すらしなかったでしょう! スティーヴンとグレッグとの仕事は楽しくもあり挑戦でもあり、もはや私にとって特別な関係なんです。

スタンナード: 例えばクリスチャン・フェネス(オーストリアの電子音楽家、ギタリスト)やキース・ロウ(イギリスの実験音楽家、ギタリスト)とのコラボレーションと比較したとき、Sunn O)))との作業はどう違いますか?

アンバーチ: いま挙げたアーティストたちがサウンドを探求する方法には、普遍性があると、私は思っています。私が言いたいのはつまり、これらのアーティストの即興や作曲にたいするアプローチには、何か共通点があるように感じられるのです。私にはそれが何なのか正確には分からないのですが、Sunn O)))を含めたこれらのアーティストはお互いに別物で違っているように見える一方、全員が音楽を立体的にとらえ、また「時間としての音楽」というコンセプトを掘り下げています。一見「シンプル」なアイデアを掘り下げ、引き延ばされた時間の中で、そこにあるディテールやニュアンス、隠された複雑さ、それらすべてを表面化させます。
彼らと仕事をすると、私はミュージシャンとして自分自身でいられると感じます。自分のアイデアや私的なサウンドを検閲しないでいいんだと。さらには全員の音楽にスピリチュアルなものがあるので、我を忘れてそのサウンドに浸れると感じます。このような度量のアーティストとコラボレートできることは、私にとって光栄なことです。

スタンナード:アイデアをアルバム『Monoliths & Dimensions』に持ち込み、そこで形にする、そのプロセスはどのようなものでしたか? 具体的には、作曲面や演奏面でほかのメンバーたちとどのように仕事をしたのか、という疑問なのですが。

アンバーチ: レコーディングの初めの週は、グレッグとスティーヴン、アッティラ(・シハー。ハンガリーの音楽家。メイヘムのボーカリスト)と私しかスタジオに入りませんでした。ほとんどの人が気づいているでしょうが、グレッグとスティーヴンのギターがSunn O)))の土台になっています。いくつかの曲の初めのトラックには、ライブでやるようにグレッグとスティーヴンとその場で一緒に演奏しながら、基礎となるギターを録音していきました。このギタートラックは通常、各曲の「土台」となります。そしてそのほとんどは、私たちが録音のために演奏する、その場で、生み出されたものです。その後、曲がどう成形され、変形されるかは極めて自由です。いつでも誰でも、アイデアがあればそれを自由に試し、オーバーダビングしてよいのです。

そういうわけで、私はまるで狂ったように、プリペアド・ピアノや電動シンバル、パーカッションなど、周りにあるものなら何でもひっ掴んで、スタジオ中を走り回っていました。有機的に物事が起こるようにしておくことについて、皆とんでもなくオープンでした。私は完全な自由を感じ、すべてを試すよう後押しされていました。あまりにリラックスした結果、例えば私は、曲『Alice』の最後に、Sunn O)))らしいとはとても言えない、大変メロディックなギターテクスチャー/電子音を加えました。このアイデアは却下されるだろうと思いましたが、最終的にはハープのオーバーダブとジュリアン・プリースター(ジャズ・トロンボーン奏者。サン・ラ、ジョン・コルトレーンのコラボレーター)の参加へと発展しました。つまりこのアルバムの骨格は、後日ゲストがそれぞれのパートを加えるより前に、録音されたもので、あるものは即興で作られ、あるものは事前にきちんと書かれたものです。

例えば、アルバム1曲目ではグレッグとスティーヴンは、ある特定のチューニングで土台となる「リフ」を録音しました。次に、スティーヴンと私は最初のトラックとは全く違うチューニングでフィードバックギターをオーバーダブしましたが、それがより「カラフルな」オーケストラ的サウンドを曲にもたらしました。直前に(ジュラール・)グリゼー(フランスの現代音楽の作曲家)のような系譜の作曲家たちについて話をしていたためもあるでしょう。その後、プレイバックを聴いてみると、それがあまりにオーケストラ的だったので、誰かが本物のストリングスを使ってみてはどうかと提案し、その結果、エイバインド(・カング。アメリカの作曲家、バイオリニスト)が参加して、スティーヴンと私の演奏を曲の中程までストリングスのアレンジに置き換えました。

このようにプロセスがとてもオープンだったため、ひとつの提案がほかへと繋がり、音楽はとめどなく進化することができました。セッションはとても自由で、とても楽しく、非常に建設的だったことを憶えています。副次的に、さまざまな即興的なセッションが行われました。そのひとつ、アラン・ビショップ(アメリカの音楽家。サン・シティ・ガールズのメンバー)とスティーヴンの父親と深夜にやったセッションは忘れられません!
驚くほど多くの素材が録音されました。エンジニアのランドール・ダンの存在も、このプロセスでとてつもなく重要でした。彼は全員から実験的な発想を募り、セッションの間ずっとアイデアが湧き続け、勢いが止まらないようにしました。

スタンナード: ニューアルバムについて特に印象的だったことは何でしたか? プロセスの点から、また全体的な音響や雰囲気から、どのように以前の作品と違いますか?

アンバーチ: 『White1 』(2003年)や『White2』(2004年)のようなSunn O)))の初期のアルバムのいくつかは、完成されたアルバムもしくはひとつのメッセージというよりは、個別の曲のコレクションのようだと私は感じていました。最近リリースされた数作はアルバム全体としての強さが上がっていると思います。最新アルバムは特にそうですね。音響的には、このアルバムは以前の作品に比べてかなりのステップアップをしており、過去のどのアルバムよりも音が多彩で野心的だと思います。Sunn O)))の最も実験的な作品でありながら、同時に大変とっつきやすく、魅力的なアルバムだと思います。

また別のジャンルからのゲストや楽器編成、影響を持ち込むことで、いわゆる「メタル」というくくりの定義を押し広げていく姿勢には、敬意を感じます。アッティラの役割はSunn O)))ではとんでもなく重要ですが、この作品は、彼のボーカリストとしての多様なペルソナが、本当の意味でフィーチャーされた最初のレコードだと言えます。エイバインドのストリングスやボーカルアレンジも見事です。アコースティック楽器とダウンチューニングされた重いギターを並べるのはたまらないですね。初めの曲『Aghartha』は、Sunn O)))がいままで録音した最高の曲かもしれません。私はグレッグとスティーヴンが、レコーディング時にとても自由でオープンで、リスクを冒すことを恐れず、未踏の領域へ踏み込むことをも厭わないことに敬意を感じます。

スタンナード: Sunn O)))のライブの儀式的な面についてはどう思いますか?

アンバーチ: 雰囲気は非常に重要です。ローブを着ることや暗い照明、大量のスモークは、典型的なライブ会場のありふれた環境を変える強力な手段です。それは演奏者と観客の双方が、ある状態へ達するのを助けるものだと、私は思っています。演奏者にとってこれは非常に便利で、意識を完全に切り替え、あるべき思考状態に持っていくことができます。極度に重く、遅く、そして反復するサウンドを、私はかつて経験した儀式――若いころユダヤ教会で祈祷用のショールを身につけ、ゆっくりした詠唱や同じ文節やメロディを何度も何度も繰り返した経験――とつながるものとして、個人的なレベルで捉えることができます。私にとって、日常や肉体から、より高み、何かスピリチュアルなものへと昇華するという点で、教会での経験とSunn O)))での演奏はそれほど違わないのです。

スタンナード: マイルス・デイビスやアリス・コルトレーン、サン・ラのような伝説的ジャズミュージシャンの、最新アルバムへの影響について話してもらえますか? それからジュリアン・プリースターの参加について、特に曲『Alice』での役割について。

アンバーチ: 私はジャズをたくさん聴いて育ったのですが、グレッグがこの種の音楽にとても熱心だと分かったのは、うれしい驚きでした。レコーディングの数ヶ月前に、私たちはツアーで日本にいたのですが、二人で70年代エレクトリック期のマイルス・デイビスの海賊盤を4、50枚は買ったと思います。そんなですから、ツアー・バスの中でエンドゥームドを聴いた後にトニー・ウィリアムスのライフ・タイムを聴き、その後にパン・ソニックを聴いたりすることは別に変わったことではありません。Sunn O)))はあらゆるスタイルの音楽に関心があって、これらの影響は彼らの作品に沁み渡っているのです。

スタンナード: あなたなら、音楽的な系譜のどこにSunn O)))を置きますか?

アンバーチ: その質問はグレッグとスティーヴンに聞くべきと思いますが、ブラック・サバスからインド音楽からミニマル・ミュージック、特にニブロックのような作曲家によるものまで、全てとの関連を私は聴き取りますね。

スタンナード:Sunn O)))のヘヴィメタル的な要素、さらにはメタル一般と、あなた自身との関わりについては、何が言えるでしょう?

アンバーチ: すごく若いころにはサバスのレコードを全部持っていましたから、普通の男の子と同じように子供のころからヘヴィなサウンドに興味はあったんです。その後に私はメルヴィンズ(アメリカのオルタナティヴ/ヘヴィロック・バンド)の大ファンになりました。1993年ごろには、90年代初期のノルウェーのブラックメタルのすべてに精通していました。私は膨大なブラックメタルのコレクションを持っていて、笑ってしまうような数でした。音楽の中に新しい言語を発見することは素晴らしいことですが、初めてブラックメタルを聴いたときとても興奮しました。いくつかのブラックメタルを聴くと、素晴らしい音楽や私が大好きな音楽の多くと、共通の感じを受けます。素晴らしい質感を持ち、ミニマルで、完全にトランス傾向がある音楽なんです。

私が魅力を感じるメタルは、技術偏重だったり「派手な」ものではありません。ある種の雰囲気や風変わりなオーラがある、ミニマルで反復性があるものが好きなんです。
Sunn O)))の作品を占める音響的、視覚的に大きな要素は、雰囲気とオーラだと私は考えています。音響的にはメタルの影響があり、そのような質感を持っていますが、メタルを超越してほとんどサイケデリックと言えるものになっており、それは私の好きなアーティストやレコードの多くに共通することなんです。

スタンナード: グレッグとスティーヴンは二人ともSunn O)))のサウンドに内在する暗さに言及しています。あなた自身はこの暗さと、どう関わっていますか?

アンバーチ: 私にとって大好きで関わりたいと思う音楽は、緊張感、神秘性、そして美しさが根底になければなりません。たぶんそれが、彼らの言う「暗さ」なのではないでしょうか?

(終わり)